今回で97回目を数える東京箱根間往復大学駅伝競走。新型コロナウイルス感染拡大の影響により異例のシーズンとなったが、2021年1月の箱根路では21チームが1年間の鍛錬の成果を競う。大混戦が予想されるなか、各チームの監督の戦略を紐解く。
国士舘大学
第97回箱根駅伝予選会:5位
第96回箱根駅伝(前回大会):総合19位
5年連続、49回目
Head Coach of the TEAM:添田正美
“表と裏”のエースで31年ぶりシード権獲得へ。
文=杉園昌之
5年連続で予選会を突破し、箱根駅伝の出場権をつかんだ国士舘大学の添田正美監督は、いつになく自信に満ちている。
「今回は本気で10位以内を狙えると思っています。シード権争いに加わりたい」
箱根路で苦杯をなめ続けてきた指揮官の言葉には実感がこもる。就任6年目を迎える43歳。国士大の監督として初めて臨んだ93回大会から3年連続で繰り上げスタートを経験し、最後まで1本のたすきをつなぐ難しさを痛感してきた。
そして、前回大会でようやく一つの目標を達成した。結果は総合19位。誇れるような順位ではないが、10区の鶴見中継所では笑顔のたすきリレーを見ることができた。
今回は31年ぶりとなるシード権獲得を目指し、チーム一丸となって突き進んでいる。コロナ禍の影響を受けながら、春から夏前にかけても充実した練習をこなした。現役時代にトラックレースで実績を残したOBの小川博之助監督を迎え入れ、例年以上にスピード練習を強化したことが大きいという。学内のタイムトライアルでは5000mなどで自己ベストを更新する選手が続出。夏合宿ではスタミナ強化のためにしっかり走り込み、チーム力を底上げしてきた自負がある。
10月17日の箱根駅伝予選会では、余力を残して5位通過。「前半もっと突っ込めたと思いますが、無理はさせなかった」と余裕をのぞかせた。1時間2分台で走った清水拓斗をはじめ、1時間3分30秒を切った木榑杏祐(ともに3年)、即戦力となる1年生の中西真大らには厚い信頼を寄せる。
「昨年度以上に太い金太郎飴がつくれたと思っています」
2区でトップに立ち、貯金をつくる
頭には、すでに区間配置のイメージはあるようだ。前回2区で区間4位と好走した絶対的なエースのライモイ・ヴィンセント(3年)を生かす算段を立てている。
「1区と3区がうまくいけば、流れると思います。この2区間はポイントになります。力のある選手を置きたいです」
1区で区間10位程度でまとめ、前々回同様に2区でトップに立つことを想定。ただ、先頭に出るだけではない。願わくば、ケニア出身の大砲の区間で貯金までつくるつもりなのだ。1区には威勢のいい1年生が立候補している。予選会でチーム内4番手のタイムを出した山本龍神は、米子松蔭高時代から駅伝で1区を走っており、自信をのぞかせる。
「1区を区間一桁で走りたい。ここは他の区間とは違います。スパートを切るタイミングが大事。ラストをうまく切り替えられるように練習しています。コースまで頭に入れ、イメージトレーニングもしているんです」(山本)
他にも都道府県駅伝の1区で区間3位に入った実績を持つ遠入剛(1年)も1区候補の一人。添田監督も高く評価しており、頭を悩ませるところか。
「1区の走者は1秒でも速くヴィンセントにたすきを渡してほしい。どんなレース展開にも対応し、突っ込む勇気がないといけない。ハートが強くないと」
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