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Thursday, October 14, 2021

映画『DUNE/デューン 砂の惑星』レビュー:圧殺されそうになる映像、人を選ぶ名作 - GIZMODO JAPAN

sakonsahom.blogspot.com

2時間35分の超重量級映像体験。

コロナ禍で延期が続いたものの、ついに公開となるSF超大作映画『DUNE/デューン 砂の惑星』。映像化が困難と言われ続けた伝説的SFシリーズを『メッセージ』、『ブレードランナー2049』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が撮ることで、本当に本当にとんでもない映画が生まれましたよ!

ネタバレは控えめな内容となっておりますが、ある程度設定やストーリーなどを紹介するので、気になる方はまず先に劇場へ!

『デューン』という作品のすごさ

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©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

そもそも『デューン』ってなんなのよという人に事前に説明しておくと、『デューン』はアメリカのSF作家のフランク・ハーバートによって1965年に発表されたシリーズで、全6作に及んだ大河SF

AIとの戦争との後に中世的な社会になった遠未来を舞台に、「デューン(砂漠)」として知られる荒涼としながらも超重要な資源「スパイス」を産出する惑星アラキスで繰り広げられる人類の帝国の権力争いを、砂漠の民「フレメン」の救世主となる帝国名家の子ポールを中心に描く…というのが第1作『デューン/砂の惑星』のストーリーで、今回の映画はその前半部分の映画化となっています。

小説『デューン/砂の惑星』は生態学と中東やアジアの宗教観をテーマとして大きく取り上げた、ソフトSF(物理学や科学などのハードサイエンスではなく、社会科学系のソフトサイエンスに重きを置くSFという意味。内容がソフトか、ハードではない。その面で言えばデューンのストーリーは超ハードだ!)の金字塔的作品で多大なる影響を後世に与えてきました

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©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

その最たる例は『スター・ウォーズ』(1977)。第一作が砂の惑星が舞台だったりするのはまぁいいとして、生命の精神エネルギーに関連するパワーに目覚める主人公が救世主として鍛えた剣技で帝国に戦いを挑むという下りはそのまんまだし、ハン・ソロは「スパイス」の密輸業者だったり、そのまま直球に巨大な芋虫が出てきたりと、あげたらきりがないほどの直接的な影響を受けています。

他にも『風の谷のナウシカ』など影響を受けた作品はたくさんあるのですが、その一方であまりに壮大であるがゆえに映像化が難しいとされ、『エル・トポ』のアレハンドロ・ホドロフスキーが1970年代に映画化に挑戦し、壮大に失敗。ちなみにそれが結果として映画『エイリアン』や『スター・ウォーズ』の誕生のきっかけになっていったという話が『ホドロフスキーのDUNE』(2013)という形でドキュメンタリー映画になっています。これはぜひ今回の映画と合わせてみて欲しい一本ですね。

その後1984年にまだ若手監督だったデヴィッド・リンチが映画化したものの、思うようにはいかず、だいぶ端折って小さくまとめた映画になってしまい、当時の評価と興行的にもかなりの失敗に終わりました。筆者はこの映画で『デューン』に触れたので決して嫌いじゃないんですが……その話は長くなるのでここではやめておきましょう。

それからアメリカでTV映画として制作されたりした後、2008年から再映画化計画が本格的に始まり、権利関係での紆余曲折を経て監督も何度か代わり、最終的に2016年頃にドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が撮ることになり、それがやっと完成&公開されたというのが今作なのです。

映像に圧殺されるほどの迫力

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©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

そして出来上がった映画はとにかくハチャメチャにすごい作品です。ヴィルヌーヴ監督は有名すぎる原作故の重すぎる期待に、もっともっと重すぎる愛情と熱意で応えてくれたのでした。

まずすごいのは映像。ヴィルヌーヴ監督は巨大な空間やストラクチャーに人間を小さく写し、登場人物と同時に観客を不安な気持ちにさせ、混乱の渦に飲み込むというのが得意なのですが、今作はそこが特に強調されていました。特に大きなスクリーンで観ることのできるIMAXでは彼の描かんとすることが存分に味わえて、最高の体験となります。映像の圧がすごすぎて死ぬかと思うほど

グリーンスクリーン/ブルースクリーンでの合成を主体とするのでではなく、実際の砂漠で大規模なロケを行ったり、超巨大なセットを組んで撮影したりと、実写撮影だからこそ出せる説得力をCGで補強するというスタイルにしたのだとか。これは言葉では説明しきれぬレベルのすごさで、もう砂漠や巨大建造物を見に行くSF観光映像としても成立してますよ。

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©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

そんな映像のインパクトを支えるセット、衣装、小道具といったプロダクションデザインがとりわけすごく、こんなにも贅沢にお金をかけて独特なカッコいいデザインが立体化しているのを見られるのはSF映画ファンとしてはだいぶ幸せ。今までのSF映画でみたことがあるようなものの連続ではなく、独特でかつ『デューン』っぽい魅力に満ちたデザインです。

そうしたものもだいぶ実写で撮れるようにしたらしく、巨大なオーニソプター(ヘリのような飛行ビークル)の大部分も作ったし、砂漠を移動するためのスーツも映画内の設定同様に過酷な砂漠での撮影に耐えられるようなものにしたのだとか。今作のデザインがかつての小説『デューン』のように後世に影響を与えていく可能性は多いにあるでしょう。

ちなみにそういったデザインが好きな人はきっとアート集『ドゥニ・ヴィルヌーヴの世界 アート・アンド・ソウル・オブ・DUNE/デューン 砂の惑星』が欲しくなるはず。日本語版は限定3000部とのことなのでお早めに…!

キャストも抜群

そしてキャスト陣も豪華で、主演のティモシー・シャラメはこの映画で描かんとしている不安を抱えたポールのキャラクター像にぴったり。そして彼の成長を助ける父、師、友をそれぞれ演じるオスカー・アイザック、ジョシュ・ブローリン、ジェイソン・モモアは抜群。彼らの話をもっと見たい…!

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©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

主人公ポールの夢に出てくる謎の女性チャニを演じるゼンデイヤはあんまり登場シーン自体は長くないものの、主人公の原動力となることを納得させるだけの引き込まれる魅力があります。

ヴィルヌーヴ監督は『デューン』を撮るためにやってきたのかも

また、ヴィルヌーヴ監督は多感な10代の頃に原作小説に出会い、その後映画監督になるのですが、最初に手掛けたドキュメンタリー風SF映画『REW FFWD』はジャマイカのスラム街を訪れた若きカメラマンの物語で、異文化交流の話であり「精神」と「記憶」もテーマとしており、すでにこの段階で『デューン』っぽさを感じさせます(ちなみにカナダの国立映画庁のサイトで無料公開されていてこちらで視聴可能)。

以降も彼の映画ではそれらのテーマは繰り返され、荒野や砂漠が繰り返し登場し、今振り返って思えばドゥニ・ヴィルヌーヴ監督はこの『DUNE/デューン 砂の惑星』を撮るために監督をやってきたんだと思えるほど。言わば彼のキャリアの集大成的作品であり、そうするに相応しいものになっていると思います。

加えて個人的にドゥニ・ヴィルヌーヴ監督を評価したいところとして、無茶なSF作品に果敢に挑んでいるというところ。伝説的過ぎてどうやったって比べられて低い評価をつけられてしまうであろう『ブレードランナー』の続編をやった後に、何度も失敗している『デューン』の映像化を引き受けるというガッツに敬意と感謝を示したい。

そしてドゥニ・ヴィルヌーヴ監督だけでなく音楽のハンス・ジマーもまた原作の大ファンで、いつも組んでいたクリストファー・ノーラン監督の『TENET テネット』を断ってまでこの映画に参加し、新しい楽器を作り出して、聞いたこともないような独特な音のする曲を用意してきました。

これがまたいつものハンス・ジマーのお得意の音とはまた一味違っていいものに仕上がっています。今もうすでにCDだったり音楽配信サービスで聞くことが可能ではありますが、これはぜひ劇場で聞いてもらいたい。よりいい音のためにドルビー・アトモス(立体音響システム)対応の映画館で観るというの十分アリだと思いますね。

全方面ですごいけど、それでも人は選ぶ名作

映像も音も褒めても褒めきれぬ作品なのですが、その一方で欠点がないわけでもなく、相当に人を選ぶ映画になっていると思います。

まずそもそもとしてこの映画は、2時間35分というかなりの長尺映画で監督&SFのファンとしてはたまらん嬉しさがあるわけですが、それにしたって長い上に、あくまでパート1で、原作で言ったら一冊目の中盤あたりで終わってしまいます

本当に丁寧に時間をかけて、広大な砂漠をスパイス採掘機のようにゆっくり進んでいく展開ではあるので、テンポは正直いってあまり良くありません。また、やや難解な設定や世界の謎があまり語られないまま終わるので、どんな映画にも明確な答えが欲しいし、バシッと終わって欲しいという人の好みにはまったく合わないものになっていると思います。

続編を作るぞという勢いで作られた映画だとは思うのですが、人によっては「何も起こらなかった映画」という評価になってしまうんじゃないかという心配があります。自分としては監督の『デューン』に惚れ込んだので、どうにかして続編を作り出して欲しい

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©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

また後世の作品で引用をされ続け、言ってしまえば使い古されたストーリーではあるので、「映像的にはすごいけどどっかで見たことがある感じ」という感想も生まれてきそう。加えて、主人公を白人俳優にしたことで、未開人のところに優秀な白人が踏み込んで未開人を助けていく白人の救世主/白人酋長ものみたいに見える構造になっているところは批判の的となりそうです。

原作のストーリー展開から考えればむしろそれは逆で、そういう救世主像へのアンチテーゼになるはずなんですが、なにせ途中で終わる映画であり、白人の救世主映画だと思われてしまうはず。この件に監督もしっかり白人の救世主映画とは逆であると説明しているのですが、そこが伝わりにくい作りになっていました。それをしっかりと見せるためにも、絶対に続編を作って欲しい。

ともかく、そういった欠点を加味しても劇場に行って目で耳で最高の体験ができる映画になっていました。これは可能な限り最大級の劇場で、一度は味わってもらいたいですね! この手の映画は1年に何度も見られるもんじゃないですよ!

映画『DUNE/デューン 砂の惑星』は、 2021年10月15日(金)公開。

Source: 『DUNE/デューン 砂の惑星』公式サイトYouTubeNFB CanadaNerds of Color

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