「もう我慢も限界だ」
パリ在住の知人が最近、フランス政府が取り組むセーヌ川の水質浄化の問題について憤っていた。7月下旬に開幕するパリ五輪ではセーヌ川が競技の舞台となるため、仏政府やパリ市は14億ユーロ(約2370億円)の予算を費やし、水質浄化策を実施。マクロン大統領はセーヌ川がきれいになったことを証明するため、泳ぐ約束までしていた。
だが、五輪開幕までもうじき1カ月前だというのに水質が十分に改善されていないという。前述の知人が怒るのは政府の無策ぶりだ。水質を保証できないために1923年から遊泳が禁止されてきたセーヌ川を短期間できれいにするのは困難だ。知人は「マクロンは大事な政府の大金を無駄にした」と非難する。
五輪の開催準備を巡っては、政府はパリのホームレスを他地域へ移動させている。セーヌ河岸の露天商に開催期間中の立ち退きも指示したが、猛反発を受けて撤回した。近隣住民は「首都美化の一環で貧しい人や市民の生活が脅かされるのは我慢ならない」と語気を強める。
怒りが頂点に達しつつあるのか、一部の市民が政府の対応への抗議のためにセーヌ川で排泄(はいせつ)するよう呼びかけているらしい。理解しがたいデモだが、開幕直前の混乱ぶりだけは伝わってきた。
(板東和正)
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