ヤクルトの奥川恭伸が、2年ぶりの1軍マウンドで先発復帰した。投手力に弱点があるヤクルトにとって、奥川がどういう状態で復帰してくれるのかは、今後を占う意味でも大きな問題だっただろう。結果は5回を投げて1失点。球数は79球だが、久しぶりの1軍マウンドでは、ちょうどいい球数だったと思う。

結果は◎がつけられるし、投球内容も合格点を与えられる。立ち上がりは抜け球も多く心配だった。それでもオリックスの未熟な守備に助けられ、3回まで4点の得点をもらった。こうなれば積極的にストライクゾーンで勝負できるし、制球力のいい奥川にとって十分に力を発揮できる状況になる。杉本に1発は浴びたが、4回と5回は尻上がりに調子を上げていった。

それでも今後に向けての活躍を問われると「?」になってしまう。まず、ヒジから上げて背中側に入ってしまうテークバックは、故障前とほとんど変わっていない。これだと左肩を開かせないと投げられないし、どうしても腕が振り遅れてしまう。前回の長期離脱につながった右ヒジ痛の根本的な要因が修正できていなかった。

今後に向けての気になる点は、もうひとつある。ケガで長期離脱した選手は、患部以外の箇所のウエートトレーニングや、走り込みなどの強化練習を十分にこなせる。そのため、体がひと回り大きくなる。年齢的にも高卒5年目の奥川なら、どんどん体が大きくなる時期。しかし奥川のシルエットを見る限り、あまり大きくなっているように見えなかった。ユニホームを脱げば違って見える可能性はあるが、お尻回りや太ももは、それほど変わっているように思えなかった。

21年の活躍を見れば、説明するまでもなくプロで活躍する能力とポテンシャルを備えている。それだけに、本人はケガ前の状態に戻せばいいと思っているのかもしれない。今、私から奥川にアドバイスするなら「それではダメ。ケガをする原因を考え、投げ方を直す。もしくはケガをしないような強靱(きょうじん)な体作りをしなさい」と話すだろう。

2年ぶりに復帰した若い投手がいいピッチングを見せたのに、厳しいことを言うのは少し気が引ける思いもある。しかし、奥川はもっともっと上のレベルを目指せる投手だと思っている。1年を通して活躍できるエースに育ってもらいたい。(日刊スポーツ評論家)