リピーター続出の大ヒット映画『花束みたいな恋をした』では、ダブル主演を務めた人気俳優・菅田将暉と有村架純の好演が話題だ。ドラマオタクのエッセイスト・小林久乃氏が、2人の演技が観客を引き付ける理由を考察する。
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コロナ禍によりエンタメ不況と言われる2021年において、映画『花束みたいな恋をした』がとんでもないヒットを飛ばしている。映画興行成績は1月29日の公開以来、連続して第1位を獲得。興行収入も20億円に届く勢いだ。
実写の邦画によるこれだけのヒットは異例だ。私も作品を観た感想が尽きないほど、それこそ夜が開けるまで話すことができそうなほど、小さな感動をいくつも覚えた。
伏線が広がる脚本へ絡みつく、主役2人の演技
『はな恋』は菅田将暉さん、有村架純さんの主演による、1組のカップルの物語。いくつもの偶然を共有して惹かれあって、一緒に暮らしていく。例えばそこへどちらかが難病を抱えているとか、実は血縁関係のある兄妹でしたとか、そういうハプニングに近いドラマはない。
普通の物語がなぜ観客の関心を引き寄せるのかといえば、脚本家・坂元裕二氏の力が大きい。ドラマ『最高の離婚』(フジテレビ系・2013年)、『カルテット』(TBS系・2017年)など、物語の中に多くの伏線を仕掛け、最終的には全てを回収していくのが彼の脚本の特徴でもある。作品の背景となる時代のカルチャーをよく考察していて、台詞にもその力が感じられる。一度でも彼の作品にハマると、底無し沼から出てこられないファンも多数いる。
そんな坂元氏の脚本に対して、映画では主演の2人が本当に上手に絡んでいる。有村さんは『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系・2016年)で一度、坂元氏とタッグを組んだことがあるものの、菅田さんは初めてだ。
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