日本陸連の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダー(64)が、日本記録を大幅に塗り替えた鈴木健吾(25=富士通)の走り、サブ10(2時間10分以内)が42人など好記録が多く誕生した背景を解説した。

活況が続くマラソン界に、さらなる明るい話題。競争激化による相乗効果にも期待を寄せた。

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力があるのは分かっていたけど、まさか4分台が出るとは、夢にも思わなかったね。歴史を変えた。35キロを過ぎてからもペースを上げることができるのだから、鈴木は強いよ。余力がある証拠。さらにスピードをつけて、最後まで競る相手がいる展開ならば、まだまだタイムを1分ぐらい縮められるんじゃないか。

走りはバランスがよく、燃費がいい。上へ跳ねるわけでもなく、肩の力が抜けている。腕振り、足の運びも癖、無駄がなく、リズムもいい。体力を消費しない理想的な形だ。後半でフォームが乱れる選手もいるが、鈴木の場合は、むしろ後半の方が良くなる。周りに左右されない強い心もあるね。7位だったMGCは必要以上に仕掛けて、力を使ってしまった。その反省が生きているのだろう。冷静にレースを運ぶことも覚えた。

サブ10は42人、2時間7分台以内は15人。鈴木だけでなく、好タイムが多く出た背景には、気温、風、日差しとコンディション全てが、絶好だったこともある。今までびわ湖毎日は暑かったり、雨が降ったり、条件が悪いことが多かったけど、今回は最後の滋賀開催だからか、びわ湖の女神がほほ笑んでくれたのかな。ありがとう。

コロナ禍で海外から招待選手を呼べなかったから、日本人中心の集団でペースが安定していた。ペース変動が少なく、後半までスタミナを温存できた。同じぐらいの力の選手が集まれば、心理的にも楽だし、大きい集団は風よけにもなる。そういう要素もあるけど、この結果は素晴らしい。リーダーとして、こんなにうれしいことはないね。

鈴木は25歳。まだまだ若手。この結果は、他の選手には刺激になり、モチベーションも一気に高まるはず。もう2時間4分台の目標は、当たり前のものとなる。相乗効果でレベルアップできる。日本が世界に近づく、大きな大きなレースになった。(84年ロサンゼルス、88年ソウル五輪代表)

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