同じ漢字を三つ組み合わせた文字がある。「木」を三角形に並べた「森」などが思い浮かぶ。字典を開くと、「品」「轟」など、同様の文字をたくさん見つけることができる。漢字の面白さの一つといえる。 「牛」を三つ重ねた「犇」という字もある。すぐ読める人は少ない。常用漢字にも入っていない。「めく」と送り仮名を付けて「ひしめく」と読む。それを知り、ようやく膝を打つ人も多いだろう。「混雑する」の意味でよく使われる。「角川新字源」は「牛の群れがおどろき走る意を表す」と成り立ちを解説する。 福島県自慢のブランド「福島牛」は、新型コロナウイルス感染拡大の直撃を受ける。飲食店や宿泊施設の需要が激減し、生産者が苦境に陥る。風評が立ち、極度の販売不振を招いた原発事故の苦い記憶がよみがえる。「あんな思いはしたくない」。関係者は少しでも販路を拡大しようと知恵を絞る。 ＪＡ全農福島などは一日、インターネットで福島牛の消費拡大を呼び掛けるキャンペーンを始めた。格安に提供し、消費者に「品［しな］」の上質さを知ってもらう。倉庫に「犇めく」牛肉がどんどん売れれば、評判は全国の食卓にも「轟［とどろ］く」に違いない。
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July 02, 2020 at 08:30AM
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