福島県内の肉牛農家が途方に暮れている。東京電力福島第一原発事故の影響で県産牛の価格が落ち込む中、「牛(うし)マルキン」という交付金制度がコロナ禍に伴って「改悪」されたからだ。関係者からは「廃業する農家が増えかねない」と悲鳴が上がる。 (榊原崇仁)
牛マルキンの正式名称は「肉用牛肥育経営安定交付金制度」。交付業務を担う独立行政法人「農畜産業振興機構」(東京都港区)によると、一九九一年四月の牛肉輸入自由化の際、国内農家を保護するための緊急対策として始まった。肉牛を売っても赤字が出そうな場合に国費などで穴埋めする仕組み。マルキンのキンは「緊」に由来する。
機構は毎月、一頭を出荷するのに必要な費用、つまり子牛の購入代やえさ代、人件費などを合算した標準的な生産費を導いている。百二十万円程度が一般的。一方で各地の市場価格を基にし、一頭当たりの標準的な販売価格も算出する。
一頭当たりの標準的な販売価格が生産額を下回る場合、牛を売っても赤字になる。その九割を出荷した登録農家に交付する。一頭当たりマイナス十万円の月に売れば九万円がまかなわれる計算だ。
標準的な販売価格などは一般的に都道府県単位で計算されてきた。ところが、福島の牛は約七割が県外市場に出荷されている。正確な価格が把握できず、全国的な平均値を販売価格としてきた。最近、県産牛だけの市場価格を抽出できるようになり、今年四月からそれを販売価格とする予定だった。正しい値段でマルキンの交付を受けられる環境が整ったことになる。
そこに、唐突な国の制度改定が飛び出した。標準的な販売価格は三月以降、「関東」「近畿」などの地域ブロックごとにはじき出すことにしたのだ。
農林水産省の公表文書によれば、牛マルキンの交付額は県ごとに開きがあり、不公平感が高まっていた。さらにコロナ禍の影響で肉牛の価格が下落し、今後の交付額が増えるおそれが出てきた。それで制度を見直し、格差が生じないような仕組みに変えたという。
福島県は東北ブロックに区分けされる。ブロック内では高値が付く米沢牛、前沢牛、仙台牛といったブランド牛が生産されている。その影響で、福島の肉牛農家にとっては、実際の取引価格より標準的な販売価格が高くなり、計算上の赤字の幅が狭まる。その分、交付額が減ってしまう。
農水省の公表文書によれば、東北ブロックの三月分の販売価格は、一頭当たり百一万円。標準的な生産額は百十九万円。差額の十八万円の九割、つまり十六万円あまりが交付される。これに対し、福島県産牛の販売額は「原発事故の影響で一頭当たりで八十万円余り」(福島県畜産課)。実際の赤字は四十万円に迫り、とうてい見合わない。
県畜産課の森口克彦課長は「制度が改定されなかった場合と比べて十数万円の減額。事前に制度改定の連絡がなく、業界紙で知った。農水省に問い合わせると『コロナで人を集められなかった』という回答だった」と明かす。
憤りが収まらないのが県内の農家だ。棚倉町の沼野裕一郎さん(39)は「原発事故の風評被害はまだ続く上、コロナ禍で外食産業や宿泊業界の需要が激減した。そんな中でなぜ私たちが割を食わなきゃならないのか。死活問題で、全くふに落ちない」と訴える。
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