グランドスラムに歓喜が全身を貫き、男泣きをこらえた。DeNA度会隆輝外野手(21)が1点リードの8回2死満塁、変則左腕でENEOSの先輩でもある巨人高梨のスライダーを捉え、右翼席に豪快に運んだ。新人では球団史上初となる3号満塁弾となった。試合前まで14打席無安打と苦しみ、22試合目でプロ入り後初めて1番を外れ「8番右翼」で先発したドラ1ルーキー。10試合ぶりの猛打賞で応え、チームに3試合ぶりの白星をもたらした。

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度会がこぼれ落ちそうな涙を何度もこらえた。1点リードの8回2死満塁。柵越えを見届け右拳を上げる。ベンチに戻ると、しんどい時に支えてくれた監督、コーチ、先輩たちがいる。スタンドには打てないときも温かく見守って応援してくれたファンがいる。「男たるもの、泣いてはいけないなと。いろいろな感情がこみあげてきてしまいそうになったんですけど、耐えました。幸せなうれしすぎる時間でした」。透き通った潤んだ瞳で言った。

打てない日々はつらかった。試合前まで14打席無安打。直近2試合の23日からの阪神2連戦(横浜)では最終に打席が回るも三振に倒れた。いずれも一打、1発が出ればサヨナラの場面で最後の打者に。球場のため息が重くのしかかる。バットをたたきつける寸前でこらえ、悔しさをあらわにした。それでもコーチや先輩の助けを借りながら、根っからの明るさを貫いた。「マイナスには1回も考えていないですけど、悔しさってもちろんあった。本当に本当にこれ以上良いチームはないと思います」と感謝した。

人生初の「ライパチ」でトンネルを抜けた。2回2死、巨人戸郷から左前打で15打席ぶりの安打を放つと、5回先頭でも右前打。10試合ぶりの複数安打でリズムに乗り、球団史上初の新人での満弾につなげた。「この前までは難しく考えすぎた部分もある。今日は本来の自分らしさを出せたのかなと思います」と打順を変えて積極性と冷静さを兼ね備える打撃を取り戻した。

この日の試合前には早出特打でバットを振り込み、試合終了直後にはベンチで真剣に野球ノートをつけた。「打席の振り返りと思ったことを書こうと。プロ入ってからは今日始めました。度会なら安心して見ていられると思ってもらえる選手になれるように頑張ります」。何度も壁を乗り越えて、度会はまた強くなる。【小早川宗一郎】

▽三浦監督(度会の8番起用について)「苦しんでる部分もありました。打順を下げて、気分的にも違うところで出してみて、見事に3安打で。持ってるのかなと思います」

【動画】8番で蘇った!DeNAドラ1度会隆輝が満塁アーチ 番長三浦大輔監督も満面の笑顔