実際に牛を飼育するよりも環境に優しいとして、牛の細胞からつくった培養肉に注目が集まっている。イスラエルの企業が薄切りの「ステーキ肉」培養に世界で初めて成功。同社は2023年の商品化に向け、市場の成長を見込んで味や食感などの改良を重ね、本物の再現を目指し挑戦を続けている。
ジュウジュウと音を立て、フライパンで焼き上げられるステーキ。見た目は普段口にする牛肉と同じだが、使われているのはイスラエルの企業「アレフ・ファームズ」が作った培養肉だ。
アレフ・ファームズは2017年に創業し、18年12月に世界で初めて細胞培養による「ステーキ肉」の作製に成功した。採取した牛の細胞から筋肉や脂肪、血管の細胞を培養し、特定の比率で組み合わせて成形。広報担当のヨアブさんは「食感には改良の余地があるが、焼いた肉の香りやうまみは本物の肉とほぼ同じ」と胸を張る。
さらに品質を高めて量産できるようにし、23年にはレストランでの提供を始める計画だ。一般家庭向けにスーパーマーケットなどでも販売するのが目標だという。
日本でも日清食品ホールディングスと東京大が、既に約1センチ角のサイコロ状の組織を作製し、培養ステーキ肉の実用化に向けた研究を進めている。
牛肉は豚肉や鶏肉と比べ、生産時に発生する環境負荷が高いとされる。牛肉1キロを生産するのに1万~1万5000リットルの水が必要との研究もあり、餌となる飼料の栽培などで温室効果ガスを大量に排出する。牛が胃で餌を分解する際に発生したメタンガスをげっぷやおならで出すことも温暖化の主な原因の一つとされ、抑制が課題となっている。
その点、培養肉は環境に優しい上、密閉容器の中で製造されるため、汚染の心配がないという。家畜が犠牲になることもなく、動物愛護に貢献できるという利点もある。
世界的な人口増加に伴って食肉消費量の増加が見込まれる中、従来通りの食用肉の供給方法は「持続可能ではない」とヨアブさん。培養肉や、植物性原料で肉の味や食感を再現した代替肉の需要が今後高まるのは「間違いない」と断言する。
技術的には肉の厚みを出すのが難しいというが、生産コストの削減や消費者の心理的な抵抗感をなくすことなどを乗り越えれば、日本を含む世界の食卓に「培養肉のステーキ」が並ぶのはそう遠くないかもしれない。(エルサレム 共同)
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February 25, 2020 at 03:00AM
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細胞培養の「牛ステーキ肉」はいかが イスラエル企業、23年の商品化目指す - SankeiBiz
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